ボードゲームデザイン|タイル配置におけるパズル要素
この記事は、Board Game Design Advent Calendar 2018 - Adventarの17日目の記事となります。
今回のテーマは「タイル配置におけるパズル要素」です。
過去に書いたゲームデザインの記事はこちら。
マジョリティゲームをデザインする7つの視点 - ボードゲームで遊ぼうよ?
ボードゲームデザイン|「シンプルで奥深い」を疑え - ボードゲームで遊ぼうよ?
この記事でやりたいこと
今回対象とするのは、「1種類の正多角形で敷き詰められた平面(ボード・マップ・テーブル)にタイル状のものを配置するゲーム」です。
それらを以下のような軸で分解し、どんな要素があるのか整理します。
- 配置するタイルの種類
- ボードの種類
- 目的
- 配置方法
正直、幅がひろすぎるので、網羅はできません。
それでも参考になる程度にはがんばります。
さいごに、例として自作のパズルゲームの宣伝もします。
ちなみに、「1種類で平面を充填できる正多角形は、正三角形、正方形、正六角形の3種類のみ」ってピタゴラスが言ってました。
パズルの定義?まあいいじゃない。次に進むよ。
タイルの種類
配置するタイルには、以下のような要素がある。
■ かたち…だいたいはマスの形と一緒。必ずしもマスの形と一致させなくても良い。
かたち | 一言 |
---|---|
円形 | オセロやグリュックス等。向きの要素がないものや、裏返す動作に向いていそう。 |
三角形 | ブロックストライゴンやRanka等。だいたいはマスの都合。隣接数が少ない。向きを示すのに使えそう。 |
四角形 | 多くのタイル配置ゲームで採用。一般的。 |
五角形 | 将棋。向きを示すのに最適。 |
六角形 | シティビルダーやスチーム等。ボードゲーマーの憧れ。隣接数最強。 |
■ マス数…1タイルを構成するマス数。多くなるほど形状に多様性を持たせることができる。
マス数 | 一言 |
---|---|
1マス | 囲碁、オセロ、将棋、カルカソンヌ等 |
2マス | キングドミノ、インジーニアス、ジュエルディガー等 |
3マス | L-tiles、ピュンクト、LIXSO等 |
4マス | ブリックス、ワンダーズー、バトルシープ(のマップ)等 |
5マス | スカラビア |
6マス | 空中庭園 |
いろいろ | ブロックス、クマ牧場、パッチワーク、ナンバーナイン等 |
■ ランク…数字、強さ、明確な強弱。
■ スート…色、模様、明確な強弱がない種類。
■ その他…分類が面倒な難しいその他の要素。能力、穴、高さ(厚さ)、裏表……ここから先はキミの目で確かめてくれ!
ボードの種類
■ 個人ボードと共有ボード
タイルを配置するボードは、全プレイヤー共通か、それとも個別か。
共通ボードであれば、それ自体がインタラクション(他プレイヤーとの相互作用)となり、
場所の取り合いや、制限のかけ合いになりやすい。
そのため、工夫をしなければ一人のプレイヤーの行動が、
別の一人のプレイヤーを大きく制限することもある。良し悪しは別として。
一方、個別ボードであれば、比較的のびのびとプレイすることができる。
ソロプレイ感を避けるのであれば、ボード以外にインタラクションを設けるのが一般的。
例えばタイルをドラフトしたり、手番制で早取りしたり、リアルタイムで早取りしたり。
他にも、全員が共通の条件でタイル配置する(Take it Easy!,ナンバーナイン)のような形式もある。
■ ボードのマスの形
基本的には三角・四角・六角だ。
これらの形によって、隣接できるタイルの数が変化する。
辺の数が増えるほど隣接できるタイル数は増え、
周りを囲むために必要なタイル数や、
隣接させやすさ、模様を完全一致させて配置する難しさ…
など、後述する配置方法や目的の難易度、
ひいてはプレイ感に変化を与えるだろう。
2つの例を挙げる。
例1:囲碁とランカ
どちらも自駒で囲むことで敵駒をとることができるゲーム。
囲碁は陣取りなのに対し、ランカを敵駒をとること自体が目的。囲碁のマスは四角なのに対し、ランカは三角。
敵駒1つを囲むために必要な自駒は…
囲碁4つに対して、ランカは3つと囲みやすい。
(=目的が達成しやすい)
例2:ブロックスとトライゴン
同じルールだが、マスの形が四角か三角かの違い。
どちらも自分のピースを置ききることを目指すゲームだ。ユニークなのは、
「自分のピースと辺で接しない・頂点で接する」という配置制限だ。辺で接するルールであれば、四角の方が置き方の選択肢は多いはずだ。
しかし、頂点で接するルールのため、四角よりも三角(トライゴン)の方が、
自由度が高くなっている。
目的と配置方法
この記事の本題。
「同じ種類のタイルを隣接させることで得点する」は目的であり、
「同じ種類のタイルを隣接させるように配置する」は配置方法である。
この掛け合わせの妙でタイル配置の面白さがある程度決まり、
前述の要素で味付けをするようなイメージがある。
ぼくの勝手なイメージだ。
まずは、目的の例から。
目的 | 説明 | この要素をもつ作品 |
---|---|---|
隣接 | (より多く)隣接させる | キングドミノ、マイルストーン |
並べる | 直線状に並べる | 五目並べ、サンタマリア |
伸ばす | 描かれた線がより長くなるように隣接 | ポチョンク、タントリックス |
繋げる | 特定のマスとマス、ボードの対辺などを繋ぐ | スチーム、Tak |
埋める | (なるべく)隙間なく埋める/置ききる | パッチワーク、ウボンゴ |
隠す | 特定のマスにタイルを置く | クマ牧場、コプラス |
囲む | 特定のマスやタイル、駒などを囲む | 囲碁、カルカソンヌ(の教会) |
形づくる | 特定の形になるよう配置、空きマスをつくる | テトラコンボ、リバーボート |
その他、「隣接」の応用でタイル能力のコンボをしてみたり、
タイルの数字の合計値でエリアマジョリティをしてみたり(ナゲッツ)、
「繋げる」の応用でエリアを区切ってみたり(テラノバ)、
配置条件が書かれたお題カードをつくっても良いだろう(フィレンツェの匠)。
アイディア次第で拡張しやすい。
いくらでも目的はつくれそうだ。
それらの目的達成を面白くする重要な要素が、
配置方法だ。
面白さを生むためだけでなく、
強すぎる手を抑える、詰まないようにする、
といった配慮も考えられる。
配置方法 | 説明 | この要素をもつ作品 |
---|---|---|
隣接 | 特定のタイル・駒に隣接するように置く | ブロックス、ペンギンパーティ |
絵合わせ | 隣接するタイルの絵が合うように置く | カルカソンヌ、タントリックス |
押し出す | 外枠からタイルを押し込む | ギプフ、ウルムの黄金時代 |
詰める | 特定の方向になるべく詰めて置く | ブリックス、立体四目並べ |
重ねる | 配置済みタイルを土台にして置く | 空中庭園、ナンバーナイン |
手札 | 手札が示すエリアやマスに置く | ビッグシティ、アクワイア |
ブロックスのように逆転の発想で、
隣り合わない、同じ種類が隣接しない、といった方法もある。
ハイヴでは、ボードも枠もないのに配置済みの駒が移動する。
その性質を逆手にとって「すべての駒がひとかたまりで隣接しあう」
という状態を維持させる移動制限がある。
配置方法だけでなく、タイルのドラフトや競りなど、
タイルの獲得方法でも目的達成の面白さを創出できるはずだ。
パズル要素の応用
タイルをサイコロにして、転がしてみるのはどうか?
繋いだタイルの上を橋に見たて、駒が移動してみるのは?
さまざまな形のタイルでトリックテイキングを…などなど。
パズル要素は、パズルゲームにとどまらない。
今回まとめた内容で「この要素は使えそうだ!」
と思うものがあれば、ぜひ制作に活かしてみてくださいね。
最後に自作のパズルゲーム「ハニーフェスタ」を簡単に紹介して終わりにします。
※ルール・画像は開発段階のものであり、発売予定のものとは異なります
最後までお読みいただきありがとうございました。
ゆるあーと
ゆたか(@yutaka_88)
twitter.com
ハニーフェスタ
タイルの種類 | 円形、表(ハチ)と裏(花)がある、数字(1-5)と色(5色)がある |
---|---|
ボードの種類 | 六角形、個人ボード |
タイルの獲得 | 全員が同じ条件でタイルを受け取るTake it easy!形式 |
目的1 | 同じ色で隣接しあう合計8のかたまりをつくる |
目的2 | 色関係なく同じ数字を規定数隣接させる |
配置方法 | ハチ駒(1個しかない)に隣接する空きマスに置く |
ハチ駒の移動 | タイルを配置せずに捨てることで数字分移動 |
はちみつの祭典ハニーフェスタに向けて、より多くのハチミツをつくりましょう。
あなたは蜂のリーダー。
合計8のかたまりをつくったら、それらタイルを裏返してハチミツを増やします。
(右のトラックでストーンを上に進める)
ゲーム終了時、フェスの参加者&裏向き(花)タイルが得点になります。
フェスの参加者は、隣接する同じ数字のタイルが規定枚数分あれば得点化できます。
最小はN=2枚で4点、最大はN=5枚で20点です。
しかし、ハチミツが進んだトラック(行)までしか得点化できません。
ハチミツがなければ参加者も来ないということです。
ほどよくハチミツ(=同色合計8)と参加者(同数字隣接)をふやしましょう!
というゲーム。
オンラインで遊べるので、気になった方は声かけてね。