エンペラーズ・チョイス|Emperor's Choice
デザイン | HISASHI HAYASHI (林 尚志) |
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イラスト | ryo@にゃも |
人数 | 3-5人 |
ルール説明 | 25分 |
プレイ時間 | 90-120分 |
対象年齢 | 12歳以上 |
発売時期 | 2017春 |
※ルール説明は実際にかかった時間
概要
多くの要素が詰め込まれた1~2時間級の戦略ゲーム。
主なシステムは競り、セットコレクション、そして、決算方法選択。
決算は全員に適用されるため、他プレイヤーの状況を睨みながら、自分だけが有利になるような決算を選び、差をつける必要がある。
インタラクション強めの重ゲーが好きな方にオススメです。
6ラウンド終了後に最も多くの勝利点を集めたプレイヤーが勝利する。
ラウンドの流れ
各ラウンドは以下の3つのフェイズに分かれている。
1.競りフェイズ | 内政フェイズの行動順を競る |
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2.内政フェイズ | タイルやカード、資源等を獲得する |
3.詔勅フェイズ | 決算(得点処理)を2種類実行する |
※詔勅(しょうちょく)…始皇帝の意思表示のこと
各タイル・カードの効果や決算方法には様々な種類があり、情報量は多い。しかし、1つ1つの要素はシンプルで、1度プレイすれば全体像がつかめるはずだ。
プレイ順に逆らうが、本ゲーム最大の特徴である3.詔勅フェイズについて説明する。
詔勅による決算
それぞれが決算方法を示しており、例えば「兵士キューブ1個につき1点を得る」「同種の馬車タイルが2/3/4/5枚なら2/5/9/14点を得る」といった具合だ。
この決算は全員に適用される。
どの決算を行うかは、皇帝の信頼ポイントが最も高いプレイヤーが決める。
赤プレイヤーは、まず2枚ある詔勅タイルのうち1枚を選び、それを実行する。
どちらでも決算方法を選択できる。2枚の違いは、片方では貢物カードを得る、もう片方では政策カードを裏返すことができる。
貢物カードは非公開の勝利点で、2点~4点の幅でランダム。政策カードを裏返す意味は後述する。
どの政策を行うか決めたら、そのカードにマーカーを置き、即座に決算を実行する。
この政策カードであれば、「血族アイコンがあるカード1枚につき3点を得る」という決算だ。
決算選択をしたプレイヤーは、過ぎたマネをしたのだろうか?皇帝の信頼ポイントが下がる。
どのくらい下がるかは、ラウンドによって異なる。
例えば、3ラウンド目ならマイナス5ポイント。
決算は1ラウンドに2回行うため、次は黄プレイヤーが決算方法を決める。
ここで、政策カードを裏返す意味を説明する。
これは「書物タイル1枚につき5点を得る」という政策カード。これをひっくり返すと…
「書物タイルが0枚なら6点を得る(さらにすべての書物を廃棄)」という政策カードに変わる!
つまり、裏返すことで真逆の性質をもつ決算方法に変化させることができるのだ。
マーカーが既にある政策カードは、すぐに再決算することができない。7枚中6枚にマーカーが置かれると(つまり3ラウンド目が終わると)、すべてのマーカーが取り除かれ、再び決算可能となる。
さらに、ゲーム終了時、政策カードの並び順ですべての決算を行う。
したがって、どの決算をどのタイミングで実行するか?どの政策を裏返すか?どのラウンドで皇帝の信頼ポイントをあげるか?といった思考が重要となる。
ここがこのゲーム最大の特徴であり、面白さであると感じた。
行動順の競り
各ラウンドのはじめに、行動順の競りを行う。この競りにはいくつもの工夫があり、非常に面白い。
人物カードにはいくつかの要素があるが、競りでは上部に描かれた数字が重要だ。
競りはスタートプレイヤーから時計周りに行い、前のプレイヤーよりも大きい数字を出す必要がある。
この状態ならば、2か7のカードを出せる。…つまり間の数字が出せない。困った。
もしくは、兵士キューブ1個を1として、好きなだけ加算することができる。兵士は調整役として働くわけだ。
競りから降りた場合、順番タイルを獲得する。もちろん、最初に降りたら手番は最後だ。
しかし、悪いことばかりではない。まず、順番タイルと一緒にボーナスタイルが手に入る。
このタイルなら、信頼ポイントを3得られる。ボーナスタイルは早い者勝ちなので、先に降りるメリットがある。
さらに、競りで使用した人物カードや兵士キューブを、単純にすべて支払うわけではない。
5番目なら、競りで使用した5番目に強いカード、1番目なら、一番強いカードを失うことになる。
もし5番目なのに、使用したカードが4枚以下なら?
…なにも支払う必要はない。
行動順、ボーナスタイル、そして支払うコスト。このジレンマが非常に面白い競りを演出している。
※使用した兵士キューブはすべて合算し、1枚の人物カードとしてカウントする
内政による資源獲得
競りで争った行動順で、人物カードやタイルを獲得する。
人物カードはお金をつかって1枚だけ獲得できる。選べるカードはラウンド毎に並べなおす。
タイルは上の写真のように人数分の島に分けて並んでおり、枚数に偏りがある。5人なら、4枚・3枚・3枚・3枚・2枚だ。ノーコストで1か所すべてのタイルを獲得する。
その他、領地タイルの枚数分だけ収入(お金)を得たり、兵士キューブを買ったり、特殊タイルを使用したり、宮殿レベルをあげたりできる。
お金を支払い宮殿レベルをあげると、アイコンに対応した効果が得られる。
基本的には資源を得るか、信頼ポイントをあげるかの2択だ。
宮殿レベルは信頼ポイントの主な獲得源であるほか、ゲーム終了時に勝利点も産む。
これらのアクションは1つずつ行うのではなく、手番プレイヤーが一度にやりたいだけアクションする。
したがって、初手番プレイヤーが好ましいタイル群や人物カードをすべて最初に選択できる。これが競りの大きなモチベーションとなっているのだ。
1プレイヤーずつ様々なアクションを行うため、後手番プレイヤーはやや退屈かもしれない。
感想
経験者を交えて3人でプレイ。
最初は情報量の多さに圧倒された。特に、決算方法の種類が多く(7枚×両面=14種類)、把握にはやや時間がかかった。
しかし、1度プレイすると流れはシンプルだと分かった。決算方法とタイル・アイコンの種類がリンクしており、どのタイルを集めて→どの決算を狙うのか、見通すことができた。
相手の状況を鑑みて、自分だけ得するような決算を選ぶ。もしくは、誰かが実行しそうな決算に相乗りする。このインタラクションがとても面白い。
このインタラクション故に大半が公開情報となっているが、キングメーカー問題解消には「貢物カード」が一役買っている。
各ラウンドで獲得可能な人物カードやタイルの価値を踏まえて臨む手番競り。これもまた盛り上がる。
兵士コマである程度の調整は利くものの、基本的には人物カードを使用する。ギリギリで競りあげたくても、手札がそれを許さない。無駄に強いカードを失う可能性がでてくる。このジレンマがたまらない。
ラウンド全体の価値を読み切り、競り、政策を促す。各要素がしっかりと有機的に結びついた良作だと感じた。
ダウンタイムを気にしなければ、3人よりも4~5人の方がもっと面白いだろう。獲得できるタイルの組み合わせにバリエーションが出るし、ランダムに並べられるタイルの偏りも解消される。
ラーのような競り、プエルトリコのようなインタラクションを好む方にオススメしたい作品だ。ぜひ遊んでみてほしい。