ボードゲームで遊ぼうよ?

ボードゲームの紹介やプレイ日記

マジョリティゲームをデザインする7つの視点

王と枢機卿 日本語版

今回の記事は、Board Game Design Advent Calendar 2017 19日目の記事となります。
ゆるあーとのゆたかと申します。今回は【マジョリティ】というシステムをつかったゲームを考える際、その構成要素をどのように扱うか?を7つの視点でまとめました。デザインの参考になれば幸いです。

その前に

円卓Pさんが過去に「マジョリティ」に関する記事をAdvent Calendar で投稿されていました。内容が被る部分もあるかと思います。ぜひ併せて読んでみてくださいね。
マジョリティについての話: 数寄ゲームズ

あと、筆者は去年こんな記事も書きました。
ボードゲームデザイン|「シンプルで奥深い」を疑え - ボードゲームで遊ぼうよ?

マジョリティの定義

諸説あるはずです。この記事では「なにかしらの順位によって得点を得る」システムとします。

エリアマジョリティ ―すなわちマップがあり、駒や影響力で陣地を取りあうもの― 以外のゲームも今回の範疇です。マップがないマジョリティゲームも扱いますよ。

マジョリティの特徴

相対評価で得点が決まります。それゆえ、常に他者の動向に目を配る必要があり、インタラクションは強くなる傾向があります。

マジョリティゲームにおける基本戦略は、「なるべく少ないコストで最大限の得点を生む」ことです。どのような状況が望ましいかは、後述する得点ルールやタイブレークの方法などで大きく変わることでしょう。

あなたが作りたいゲームのプレイ感を思い描き、それに見合った部品を選んで、理想のマジョリティゲームをデザインしてみてください。

(試作版ができたら、ぜひ遊ばせてくださいね)

前置きが長くなりました。以下がまとめです。

1.得点(固定点/変動点)

各エリアに置ける駒の個数には上限があることが多い。上限を設けることで各エリアに特色を出したり、過度な奪い合いを抑えることができる。この場合、マジョリティの得点も固定点であることが多い。高得点なエリアほど置ける駒数が多く、1位をとるためにコストがかかりがち、というデザインだ。

変動点の例として(お決まりの)、王と枢機卿の話をする。
王と枢機卿では、エリアごとに建てた家の数でマジョリティ争いをする。
順位ごとの得点はこうだ。

1位……エリアにあるすべての家の数が得点
2位……エリアにある1位の家の数が得点
3位……エリアにある2位の家の数が得点

いつ見ても美しいルールだ。僅差で勝てば1位が美味しい。一方、エリアを独占しようとすれば、“いっちょ噛み”が最小コストで得をする。1位をとるだけが戦略じゃない。そう考えさせることで、ゲームに深みをだしている。

他にも例をあげる。十二星座という作品だ。星座にあわせて星型の駒を置き、マジョリティを争う。1位と2位は固定点なのだが…なんと、3位は置いた駒分を1位の得点から奪う。場合によっては2位の方が美味しい。

拙作ハンザの女王も紹介させてほしい。カードプレイによるマジョリティゲームだ。1位は固定点で、どれだけ影響力をあげても頭打ち。2位と3位は影響力×順位ごとの倍率で得点する。影響力の取り合いが過熱した場合、2位の方が美味しくなることもある。

「1位をとるだけが戦略じゃない」はたしかにゲームに深みをだすが、やりすぎは禁物だ。2位をとるゲームになってしまう。(そういうゲームならOK…e.g. Why First?)

2.駒や影響力(公開/非公開)

マジョリティゲームは、ガチゲーになりがちだ。駒1個の差が大きく得点に響くことが多い。それを緩和させる方法として、駒数を非公開にする方法がある。

エルグランデでは、駒の一部をタワーの中に隠し、決算まえにタワーに隠した駒の配置先を秘密裏に選ぶ。全体のうちタワーに隠すのは一部なのだが、このゆらぎが心地よいハラハラ感を生んでいる。

クシディット王国記でも、①全体に公開、②自分だけ確認可能、③メモリー(非公開) という3パターンのマジョリティ要素が採用されている。

プレイ感に合わせて、非公開情報を含めてみるのも良いだろう。

3.マップの活用

エリアマジョリティの話だ。エリアというからには、何かしらマップを活用したい。

先ほど例にあげた王と枢機卿では、4つ以上連続して家を建てれば追加点が得られる。これは各エリアを横断して連ねても良い。これにより、どのエリアに建てるか?だけでなく、エリアのどこに建てるか?という思考が生まれる。

パカルのロケット、というピラミッド建築ゲームがある。システムの根幹にパズル要素を含んでおり、マップ要素をよく活かしている。各エリアのマジョリティがある他、マップを横断する「川の近く」に建てた軒数でもマジョリティがある。

このように、配置自体にパズル要素を盛り込んだり、エリアを横断するなど別軸の要素を噛ませる、隣接エリアに何かしら作用する等といった要素で、マップを活かすことができる。

4.駒の配置/影響力のあげ方

マジョリティゲームにおいて、駒の配置や影響力のあげ方には、何かしら不自由さがあった方が良い。各エリアに自由に配置できてしまっては、おそらく先手か後手、どちらかが圧倒的有利になるだろう。相対評価で得点するゲームにおいて、逆転不可能な状況が序盤で見えてしまうのは避けたい。
制限としては、置きたいエリアを自由に選択できなかったり、自由に選ぶためにはコストがかかったり、置く駒数を定めたりするのが良いだろう。

駒を置くことで何かしら他の利点・ボーナスが得られるようにすれば、置きたいエリアとボーナスで二者択一のジレンマを生むこともできる。

筆者としては、何かしら別軸の得点源を載せるのが好みだ。
この④の視点が、作品の最も重要な要素となるだろう。


5.決算のタイミング

ゲーム終了時だけではない。ラウンド制にして積み重なる決算を行っても良いし、決するエリアをランダムしてリプレイ性をだすのも良いだろう。プレイヤーの集団意志によってタイミングを操作させるのも乙だ。

キングイズデッドという作品がある。すべてが公開情報というガチガチゲームだ。各エリアの決算する順番が予め提示されているのだが、ゲーム中にこの決算順を操作することができる。ただし、8ラウンド制で手札は8枚使い切り、そのうちの1枚の効果なので、使いどころが非常に悩ましい。参考にしたいデザインだ。

パカルのロケットでは「1位になる度に得点」、ブリュージュでは「ゲーム中1度でも単独1位になれば得点」という変わったものもある。応用できそうだ。

6.タイブレーク

駒数が同数の場合はどうしよう。闘争を求めるなら、何かしらの条件で1位を決めた方が良い。後から駒を置いた方、あるパラメーターがより高い方、等。

協調を求めるなら、どちらも1位、もしくは1つ下の2位扱いにするという手もある。1位にするか2位にするかで、当事者以外のプレイヤーの顔色が変わる。

バッティングして、その次に高い人が1位!という手もあるだろう。パーティ感がでるが、うまく狙ってみるプレイングは楽しいかもしれない。

7.順位の応用

順位と得点の仕組みを変えれば、先述した「2位の得点が最も高い」や、「1位になると失点」というチキンレースも考えられる。「最下位はペナルティ」は負のマジョリティといえる。

合わせ技として、順位が高いほど得点が高いが、最下位なら何かしら特権を得られる、というのもあるだろう。中途半端が一番よくない!「いっちょ噛み」を封殺するデザインだ。

駒の置き方/影響力のあげ方とセットで考えると良いだろう。

最後に

ここまでお読みいただきありがとうございました。また、Advent Calendar を企画してくださった I was game さん、今年もすてきな企画ありがとうございます。

マジョリティ好きの方は、拙作「ハンザの女王」もぜひ遊んでいただければ幸いです。
ハンザの女王|the Queen of the Hansa | ゆるあーと | ゲームマーケット

明日はTDSのナナツチさんの記事です。楽しみですね。
(追記:公開されました)
http://tds-project.seesaa.net/なんのためにゲームをつくるのか、その目的と目標。: とりあえずどうにかしてみよう


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